アルスノバでの受け取りと、終着駅

靴を受け取りに行くと、さっそくフィッティング。
とてもきつく作られているので、片足履くだけで30秒位かかる。
ご主人から、店の周囲、普通に歩いて2分程の距離を歩いて来るように言われる。
ゆっくり歩き、踵に痛みを感じたら無理をせず引き返すように言われ、店外へ。

甲がきつくて痛いけど、別に歩けないほどじゃない、踵は大丈夫…と考えながら一周して戻る。
思った以上に早く戻ったらしく驚かれる。
どうやら革靴に慣れている方は比較的皮膚が丈夫で慣れるのも早い、との事。
この日はKAILLERSを履いていった。ソールとヒールの部材が今の時代では考えられない程良い素材だそうで、大事にするように言われた。

試着しただけの靴をご主人に磨いてもらいながら、靴の手入れの仕方、1度履く事に少しずつ距離を伸ばし慣らす事、どんな修理でもできる等々の説明を受け、店を出た。

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納品の1ヶ月程後、土踏まずの調整に行くところ。踏まずが痛くて緩めに結んでいたのでこのあと怒られることになる笑。


…正直、万人にお勧めできる靴屋かと問われると、そうではない。
勿論信念がおありの、素晴らしい靴屋だが、それでもあえて色々あげつらうと
つくりが良いといっても、婦人靴として税込7万半はやはり高価だし、
本当にぴったりに上がってくるから慣れるまで結構痛いし、
靴紐はタッセル付だから好きな紐に変える事も結び方を変える事もできないし、
ご主人はこちらが気持ちよくなるような言葉は一切言ってはくれないし、
なんだかよくわからないがノーと言いづらい威圧感があるし、
スニーカーなんぞ履いて行こうものならそんな柔らかい靴!と3回位言われる(注文時の私)。
靴と足に対してもの凄く真摯であるゆえに、あれは良くないですそれは素人の買い方です家事は男にもやらせないと駄目ですできればもっと寝た方がなどとアドバイスがてんこもり。もう靴屋なのか何なのか分からない笑
幅狭靴を作る多くの靴屋のように、いかに幅の狭い靴がないかで話が盛り上がり、謎の一体感が生まれる事もない。
というより、あまりこちらにその手の話をさせてくれない。その10倍位の質量でもって、店の靴自慢で返されるから笑


でも、今の靴が緩くなっても、もっと狭い木型で釣り直せる と言ってくれた。
私の足を見て、恐らくもっと細くなるだろう、でもどんなに細い靴でも作れるから と言ってくれたのだ……!

これがどんなに、どんなに素晴らしいことか。
この言葉を思うだけで、私は胸がいっぱいになった。


ここからはとても個人的な話になるが、靴の購入は一種の恐怖だった。
外反母趾を防ぐためにも狭い靴が必要なのに、それを履けば履く程、足は締まり細くなっていく。
新しく靴を買い無事それが履けたとして、1ヶ月後は?半年後は?
その時も履ける保証はどこにもなかった。

靴屋で一番狭い木型の靴が、履けなかった事は一度もなかった。
だから、その靴が駄目となると店探しから始めなければならなかった。

もうそんな思いはしなくていい。
幅の狭い靴を探し始めて、長かったような、短かったような。
3年程休んでいた時があったから、短い方か。


ご主人は、昔から知っていたならもっと早く来れば良かったのに、と笑っておられたが、私は今で良かったと思っている。
当時はまだ若く、靴に7万なんてあり得ないと思っていたし(今もちょっと思うけど笑)、靴のつくりにはまるで興味がなかったので、この靴の良さは微塵も分からなかっただろう。
色々試して、失敗したからこそ納得できるところもたくさんある。
だから、今で良かったのだ。

間違いないと思える靴屋がある事が、こんなに幸せだったなんて知らなかった。
靴は10回を数える頃に12時間履けるようになった。
私は、もう大丈夫。
アルスノバを、幅狭靴探しの終着駅にしよう。


…終着駅が、古靴探しの始発駅かもしれないのは、また別のお話。
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コメント

ご年配の方はガンコな方が多いですね笑。うちの妻のじいさん、ばあさんもガンコで、半分怒ってるような口調なんですよ(・_・;

だもんで、ついついこちらも距離を置きたくなってしまうのですが、よくよか聞いてみると、タメになることを言っていたり、戦後を生き抜いてきた人ならではの苦労を経験してるんだなあと思うことがあります。

それにしても、良い靴が出来上がったようで、何よりです。私はまだ革靴にハマり始めて月日が浅いので、大分先にはなると思いますが、いつかオリジナルで作ってみたいなと思わされました(^ ^)

Re: タイトルなし

> ご年配の方はガンコな方が多いですね笑。うちの妻のじいさん、ばあさんもガンコで、半分怒ってるような口調なんですよ(・_・;
>
> だもんで、ついついこちらも距離を置きたくなってしまうのですが、よくよか聞いてみると、タメになることを言っていたり、戦後を生き抜いてきた人ならではの苦労を経験してるんだなあと思うことがあります。
>


そうですね。あとになって、ああこういう事だったのだと気付いた事もあります。
ご主人は落ち着いた話し方をされる方で、私のような小娘にも常に敬語なので、怒られているというより窘められている感じですね笑。

> それにしても、良い靴が出来上がったようで、何よりです。私はまだ革靴にハマり始めて月日が浅いので、大分先にはなると思いますが、いつかオリジナルで作ってみたいなと思わされました(^ ^)

私も靴にはまりだしたのは随分最近です。1年経ってないですよ。
それまでもパターンオーダーの店にはいくつか行きましたが、私の足では日本の既成靴メーカーでは無理だから仕方なく、というネガティブな理由でした。今は別の理由ができて楽しいです。
オーダーですが、古靴の再現の他、古靴ではなかなかない仕様もあるでしょうから、その辺り気になりだしたら良いかもしれません。
私は次作る時は、色で遊びたいなと妄想中です。ピンクのブローグとか…笑 妄想するだけならタダです。

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お役に立てて嬉しく思います。お返事遅くなりすみません。
恐らくここが最も細い靴を作れる靴屋ではないでしょうか。
癖のあるご主人ですが…笑。
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