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仮縫いチェックは体力勝負

秋の長雨、漸く現れた青空の日にアルスノバへ。



目的はもちろんブーツの仮縫いチェック。

私が店に着くと、ご主人は徐に設定温度23度のクーラーを入れる。
暑い日だったとはいえ随分低温だなあと思ったが、理由はその後知ることになる。


早速、ブーツ用の真っ白な箱から、オーダーしたワイン色のブーツを取り出してくれた。
わーこれが…等と浸る暇もじっくりみる暇もなく、さあ履いてみてくださいとブーツのファスナーを下げ、長い靴ベラを底まで差し込み、フィッティング開始である。

ご主人、自分がブーツを押さえているから体重をかけて足を入れて欲しい。と仰る。

押さえる…?
ちょいと引っかかるが、足入れをする。
のだが。

…?
???
!!!!

はい…らない!
ちっとも入らない!
若干パニックになり、思わず、えっちょっこれ入るんですかと声が上擦るが、ご主人は涼しい声で、
入ります。初めてお履きになる時にすんなり履けてしまう靴は緩い靴です。等と仰るのである。
いえ、それは何度も聞いたけど、でも。
これは全く想定外。
AAAA〜AAAAAの私の足が、まるで、全く、入る気がしないのである。

しょうがないのでぐいぐい押し込む。
片足立ちの上、右手は靴ベラを押さえ込み、左手は作業台を掴み、靴が壊れるのではないかという勢いで足をねじ込む…のに入らない。
あまりの入らなさに笑えてくる。
ファスナー付きなので筒部分はなんともないが、どう頑張っても踏まず周辺で外反母趾の骨がひっかかり進まない。ブーツに幾重も皺が寄る。
ご主人、皺を指でぐいぐい押し、革ごしに私の足をごりごり押してくる。痛い痛い!

皆さん外反母趾で引っかかりますが、これを越えたら入っていきますから。
と言われても、越えられる気がしない。
もっと踵に体重をかけてください、と言われても、既に後ろに転ぶ一歩手前ですよご主人!
ひいひい言いながら、それでもじわじわ進んでいたらしく、ようやく足入れ完了。やったー!

ファスナーはご主人が上げてくれる。1分程かけて上がった。
以前仰っていた通り、確かに馴染めば5秒で上がるかもしれない。
でも足入れに20分はかかったよご主人!
聞いてないよご主人!
そりゃあ嘘は言ってないけど!笑
これが数秒で履けるようになるとはとても思えないよ!

終わった頃には私もご主人も汗びっしょり。
皆さんブーツの時は汗をかくそうで、23度のエアコンの意味を知る。

DSC05547.jpg

ところで、靴は左右で1つである。
私も信じたくはなかったが…
この時点でまだ左足しか入れていない。
左足はむしろ前哨戦。
本番はこれからだった。


少し休憩の後、右足のフィッティング開始。

とはいえ、左程は苦労はしないと見ていた。
私の足は左に対し右の方が若干狭い。
左よりはすんなり入るだろう。そう思っていた…のに。
入らない。左より入らない。なぜ。どういうことなの。

暴れるブーツを押さえつけている反動だろうか、ご主人の手の皮がむける。
すみませんすみません大丈夫ですかとアワアワする私をよそに、ブーツはいつもこうなるんですよね…と至って普通に絆創膏を貼るご主人。よく見るとその手は傷とタコだらけである。


と、この辺りで修理の来客。
汗だくでブーツを中途半端に履き、ぐったりした顔で水をがぶ飲みする女…さぞシュールだったと思われる。


修理の客が帰り、再び入る気のまるでしないフィッティング再開。
ご主人は私が着用していた黒ストッキングを指し、少し厚めですか?と仰る。
いえ、そんな事はないと思うんですが… 。
滑りが悪く革を巻き込んでいる、本当は肌色の、滑りのいいストッキングが良い。との事。
なんですと。
全く意識していなかったが、そう言われれば確かに網目が若干荒い気がしなくもない。

だが既に左足は入っているし、ブーツ自体は左右同じに作られているらしい(私の足は左右差が少ない)。
入る筈なのだ、数値上は。

でも入らないのである。
休憩を挟みながら行っているものの、体力的にそろそろ辛い。この辺りで明日の筋肉痛を心配し始める。
たかがブーツを履くだけで筋肉痛…。自分で書いていても意味が分からない。


人は限界が近いと妄想が湧くらしい。
私のような小娘にも決して敬語を崩さないご主人の声が、スポコン漫画さながらのコーチのように脳内で勝手に変換され始める。

-もっと力を入れて!
はい、コーチ!
-靴の中で左右に揺らしてみろ!
はい、コーチ!
-靴ベラを握るな!持っていいのは上だけだ!
はい、コーチ!でももういろいろ限界ですコーチ!
(あくまで私の脳内での出来事である)

もう認めざるを得ない。
はじめから滑らかなストッキングを買ってくるべきだったのだ。
今履き替えても、もう一度左足も履かないといけないなんて体力的にも精神的にも辛い。
進むも地獄、引くも地獄。
だけど、このまま先の見えない出口に向かって頑張るより、お互いにとっても良いのではなかろうか。

これ、ストッキングを買って来た方が良いかも知れません と言ってみる。
するとコーチ…じゃない、ご主人はこう仰るのである。

-あと1回頑張ってみてからにしましょう。
そんな!私にはもう無理ですコーチ!


HALさんはぴったりの靴を望まれますし、まだお若いから、本当にぴったりに作らせて頂きました(にっこり)…ですって。
そんな意味でも場合でもないのに、微妙に喜んでしまう阿呆な自分笑。


あと1回。あと1回。
そこからはお互いもう無言。笑うと力が入らないから笑わない。
喋る余裕も、もうない。
ブーツを押さえるご主人の、汗ばむシャツの背中を見ながら頑張るだけ。


あ。
入るかもしれない。もう少し。
最後の力を振り絞る。
…入ったー!
ようやく靴べらを抜く。ふー。
ん?踵がちょっと浮いてる?
ご主人曰く、ぴったりの靴を履かれると、皆さん浮いているようだと仰います。との事。
ほほう成る程……いや、でもこれ本当に浮いてないか?左と感覚が…違う。

疲れきった体に鞭打ち、何度もジャンプ&ジャンプ!漸く本当に足入れ完了。
ブーツに足を入れる事が、こんなに体力勝負だなんて思わなかった。
汗をかきすぎて、桜色のタオルハンカチはファンデーションのベージュ色になった。


あれだけ苦労したのに、いざ両足入ってみると不思議なもので、これ位細くないといずれ前滑りするだろうな…という感じがなんとなく分かるのである。
爪先は余裕。
ボール部も余裕がありもう少し狭めても大丈夫だろうが、これ以上足入れに苦労したくないので笑、これで決定。
踏まず〜踵は非常にきつい。ギチギチに締め上げてくる。
歩くなよ絶対歩くなよ!と足に言われている気がする。

でも私は知っている、これもそのうちにぴったりになって…いつか緩くなる事を。
そう、前回作っていただいた短靴は、わずかだが、もう踵が緩い。

DSC04383.jpg

ロングウイングのため、底側が爪先から踵まで革が二重になっているおかげで、辛うじて保たれている。


右足はファスナーも上がらなかったので、これではさすがにきつすぎるという事でわずかに緩める事に。
右足の方がワイズが細い筈だが、踵やくるぶし周囲等がわずかに左と違うのかもしれない。


死ぬ程苦労した右足側。

DSC05550.jpg

本当、よく壊れなかったと感心してしまう。


仮縫い時の底はこんな感じ。

DSC05551.jpg

仮で止めているだけなので、革が縮む可能性があるらしく、仮縫い完成の連絡を貰ってからはなるべく早くフィッティングに行った方がいいとの事。

底付けをして完成だが、右足側を緩めるので当初の予定より若干長く、完成は10日〜2週間後予定(でも十分早いと思う)。


フィッティング時の注意点。

●手持ちで最も薄く、なめらかなストッキングを吟味してから行く。
自信がなければ店近くのセブンイレブンで買う(皆さんここで肌色のショートストッキングを買われるらしい)。

●アルスノバの後に予定を入れない。アルスノバの前と翌日も出来れば入れない。
この日はアルスノバの後に別店で修理済みの靴を引き取る予定があったが、疲労が凄すぎて正直とてもじゃないが行きたくなかった(行ったけど)。
その日の夜はもちろん爆睡。翌日は足と腕の筋肉痛で悶絶。

●ハンカチと飲物は必須。


完成が楽しみ、というより、恐ろしい靴である。
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コメント

No title

仮縫いチェック、お疲れ様でした。
ここまで凄まじいものなんですか?
男の靴ではここまでハードなことはないでしょう。
男の場合、アッパーが伸びるということはあまりありませんからね。
男の靴はアッパーとライニングが女性靴より分厚いですから。
男性靴が経年とともに緩くなるのは、インソールの沈み込みによるものが大きいです。
女性靴はアッパーが薄く柔らかく繊細ですから、伸びるんでしょうね。

ところで、脱ぐときも時間と体力を消耗したんですか?

Re: No title

なおけんたさん

> 仮縫いチェック、お疲れ様でした。
> ここまで凄まじいものなんですか?
> 男の靴ではここまでハードなことはないでしょう。
> 男の場合、アッパーが伸びるということはあまりありませんからね。
> 男の靴はアッパーとライニングが女性靴より分厚いですから。
> 男性靴が経年とともに緩くなるのは、インソールの沈み込みによるものが大きいです。
> 女性靴はアッパーが薄く柔らかく繊細ですから、伸びるんでしょうね。


大変でした。
ちゃんと薄くて滑らかなストッキングを選ばなかった自分のせいなんですが、もうしばらくブーツは結構です。
帰りの電車で、以前似たような体験をどこかでしたような…と思い返したところ、そうだわ娘を産んだ時だわと思ったのでした。
なんて、ちょっと大げさですけど笑。
紳士靴は分厚いですよね。S8Sでまじまじと見て驚きました。

> ところで、脱ぐときも時間と体力を消耗したんですか?

脱ぐ時は割とすんなりでした!

No title

オーダーは最初、「だ、だ、大丈夫か!?」となりますね。
私も最初はなりました。売っている物とオーダーモノは全然違っておどろきです。
その感覚の違いこそがオーダーの魅力に繋がっているのでしょうけれども・・・。

Re: No title

スニゲーターさん

> オーダーは最初、「だ、だ、大丈夫か!?」となりますね。
> 私も最初はなりました。売っている物とオーダーモノは全然違っておどろきです。
> その感覚の違いこそがオーダーの魅力に繋がっているのでしょうけれども・・・。

びっくりしますよね。
入りましたけど、大丈夫じゃなかったです笑。
よくもまあ縫い目から割けないものだと感心いたしました。
私の場合ワイズが細過ぎて今の市販では追いつかず、ぴったりの感覚とは何ぞやとずっと謎でしたので尚更です。
でも、細い方って案外多いようです。

とても参考になりました

いつも興味深く拝読しております。
私はA〜AA程度のやや細幅なのですが、それでも靴には悩まされ続けております。
こちらのお店の靴は、甲までは難なく入るものの、どうしても指周りが痛く履くと魚の目になってしまうので、一足馴染ませるのに1年半から2年かかる状態です。スクエアトウに近い足型で小指と靴のカーブがあわないのと、初回の計測とフィッティングでうまくコミュニケーションがとれなかったのが、尾を引いているようにも感じます。
ブログを拝見しブーツなら改めてフッティングもでき、仮縫いもあると知り、お願いしてみようかと考えておりました。が、私だったら仮縫いのフィッティングでギブアップしまいそうです。平素からオーナーには我慢が足りないと言われている根性なしですので。
一方で、ご本人だけでなくオーナーもこれほど大変な思いをなさってのフィッティングでブーツを仕立ててくださることを知り、こんなお店は他にはないと改めて感じいりました。
ただストッキング、それも肌色指定が引っかかっています。ブーツを履く季節にストッキングを履くのは冠婚葬祭のみ、それ以外はほぼ決まったコットン混のタイツなのです。
作るとしたらショートなのですが、ストッキングでは寒くてとても耐えられそうにありません。
オーダーに行く前に、本当にストッキングで冬越せるのか、もういっそロングにするのか、そもそも履きこなせるのかを十二分に検討しようと思います。
情報の少ないブーツのオーダーについて、詳しく書いていただき、本当にありがとうございました。これからも楽しみにしておりますね。

Re: とても参考になりました

みれいさん

> いつも興味深く拝読しております。
> 私はA〜AA程度のやや細幅なのですが、それでも靴には悩まされ続けております。
> こちらのお店の靴は、甲までは難なく入るものの、どうしても指周りが痛く履くと魚の目になってしまうので、一足馴染ませるのに1年半から2年かかる状態です。スクエアトウに近い足型で小指と靴のカーブがあわないのと、初回の計測とフィッティングでうまくコミュニケーションがとれなかったのが、尾を引いているようにも感じます。
> ブログを拝見しブーツなら改めてフッティングもでき、仮縫いもあると知り、お願いしてみようかと考えておりました。が、私だったら仮縫いのフィッティングでギブアップしまいそうです。平素からオーナーには我慢が足りないと言われている根性なしですので。


こんにちは。
スクエアに近い足の方は苦労されている方が多い印象を受けます。
また魚の目も、私も子供の頃は片足2.3個ありましたので心中お察しいたします。

私は指の傾斜が強い方のようですが、やはり小指は当たりがちです。
…が、靴に対して足が斜めに入っている事に気づいてからは大分対策しやすくなりました。
右足ですと靴に対して / のように入ってしまい、右小指側に向かって前滑りしていくので、土踏まずのアーチパッドを上げるとか、滑りにくい素材のインソールを先の方に入れてみるとかしています。
とはいえ、すでに色々試されているとは思いますが、ご参考になればいいのですが…。

アルスノバの靴でしたらレザリアンゴールドは使われていますか?
おそらくこれで手入れをするよう勧められたかと思いますが、お履きになる前日かその日起きた時に塗布して拭きあげると革が随分柔らかく、馴染みやすくなります。
ブーツはフィッティングに耐えうる体力を考慮してくれるとは思いますが…うーん。
私は30代で、あのお店の中では若い方なのかもしれません。
もっと歳が上の方にはこんなにぴったりにはしないと仰っていました。


一方で、ご本人だけでなくオーナーもこれほど大変な思いをなさってのフィッティングでブーツを仕立ててくださることを知り、こんなお店は他にはないと改めて感じいりました。
> ただストッキング、それも肌色指定が引っかかっています。ブーツを履く季節にストッキングを履くのは冠婚葬祭のみ、それ以外はほぼ決まったコットン混のタイツなのです。
> 作るとしたらショートなのですが、ストッキングでは寒くてとても耐えられそうにありません。
> オーダーに行く前に、本当にストッキングで冬越せるのか、もういっそロングにするのか、そもそも履きこなせるのかを十二分に検討しようと思います。


私もストッキングはご主人と出会うまで全然履きませんでした笑。
作っていただいたブーツ、くるぶしより上はある程度余裕があるので、レギンス+くるぶしストッキングで何とかならないかと目論んでいます。


> 情報の少ないブーツのオーダーについて、詳しく書いていただき、本当にありがとうございました。これからも楽しみにしておりますね。

このブログは、幅狭靴情報というより趣味に近く、「この靴のこの部分…萌える!」みたいに書きそうな所をぐっと堪え(?)、なるべく冷静に書くようにはしていますが、誰かの役にたてばとか、そういった事は実はあまり考えていなかったのです。
ですが、お役に立てたのでしたら大変嬉しく思います。

…もしかしたらみれいさんは、私の知っている方かもしれません。
人違いでしたら大変失礼ですが、ブログをお持ちではありませんか。
私、この名前で何度かコメントさせて頂いています。
もしそうだとしたら、私もブログを持っていた事、お伝えしていなくて申し訳なく思います。
何度か書こうとしましたが、消してしまいました。
私のブログ、カテゴリこそファッションですが…あまりにも趣味嗜好に寄りすぎてちょっと、恥ずかしかったのです。

No title

HALさん
こんにちは あのHALさんだったのですね!実はこちらのブログはずっと拝見していたものの、お名前を見ていなくて(失礼しました!)、今回コメントするにあたりお名前を拝見、もしかしたらコメントをいただいていたのでは?と思い至った次第です。
改めまして、今後ともよろしくお願いいたします。

靴への足入れ
左のほうが小指が長いので、靴に足を入れると革に指があたるためか、昔から左足は斜めに入れる癖がついております。アルスノバさんの靴は細いので、そうしないと入らないのです。
ブログの記事をいくつか拝見すると、皆さん指が当たらないと書いていらっしゃるけれど、私はその逆で他はまだ余裕があるのに指が痛くて、痛くて…。
根気強くご主人にご相談してみます。
インソールはいっぱいもっているのに使いこなせていませんでした。もっと工夫してみますね。

レザリアンゴールド
靴墨でお手入れのお話しは伺っていますが、具体的な商品名に言及なさったのかどうか、記憶が不確かでした。
履く前日の夜か当時の朝のお手入れは盲点でした!ご主人から「もっと靴墨を」と先日言われたばかりでしたが、そういうこと示唆していたのかもしれません。実践いたします。

足の状態をみながら、ブーツのオーダーを熟慮します。私の年齢からいって、ずっと甘いフィッティングになると思われますが、仮縫いチェックのときは持ち物やストッキングのことを心に留めて臨みます。
ベールに包まれていたブーツのオーダーのお話しを書いてくださること、感謝しております。

ps ワインカラー、品よく、まろやかな色味で素敵ですね!

Re: No title

みれいさん

やはりみれいさんでしたか!
初めてお店に行く前、みれいさんの記事をこれでもかと熟読しました。
ホーザリーという言葉はみれいさんのブログで知りました笑。
こちらこそどうぞ宜しくお願いいたします。

レザリアンゴールド、値段も手頃で変な匂いもなくて私は好きです。
色に迷われたらとりあえず無色で宜しいかと。
定番色はアルスノバでも売っています。

ブーツの色を褒めていただき嬉しいです。
昨日受け取って来ましたが、我ながら良い色をえらんだものだと自画自賛してます笑。
非公開コメント
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