アルスノバのショートブーツ

ブログによると昨年秋、10月中頃になるか。
完成の連絡が来た数日後、会社帰りに受け取ってきた。

本当は足のむくみのない時間帯に行きたかったが、なかなかそうもいかない。
現実はいつも厳しい。

会社を出て歩きながら、今から行きますと電話。
靴をオーダーしないのなら特に予約の必要はないが、私は来店前になるべく電話するようにしている。
お一人で回しているお店なので先客がいたら待たないとならないし、ごく稀に臨時閉店している時もある。

着くと早速ベージュのストッキングに履き替えフィッティング。
前回よりもかなり楽に入り、片足1分で済んだ。
仮縫いより緩めた右は、少々緩め過ぎたように思うが、それでも前回オーダーの短靴よりも細いというから驚きである。
人間って凄い。

それにしても。
一度履くとかなり馴染むとの事だが、仮縫いの時にベージュのストッキングでいけば、少なくとも半分の時間で済んだのでは…と、遠い目をせずにはいられない。


短靴と同じように、店の周りを一周してくるように言われ、そろりそろり歩く。

とにかく踵が痛い!きつすぎる!
このブーツのカウンター、実は金属製ではなかろうか…。

日本橋の裏道、仕事を終えて楽しそうに飲み屋に向かうであろうサラリーマンズの横を、ロボットのように歩く珍妙な女が1人。
ギーカシャン。ギーカシャン。
短靴で歩いた時よりも辛く、戻ろうという考えもよぎったが、意地で一周して戻る。

戻ると、一周できたのだから、履いたままお帰りいただきます。
一周できる人は、大抵家まで履いて帰れるから。とな。
ええと、電話であらかじめ聞いた時は私の聞き間違いかと思ったのだが、どうやら違うらしい。
前は普通に箱に入れてお持ち帰りだったのに…。

履いてきた短靴は前回オーダーしたロングウイングだが、こちらは既に箱に詰められており、ご主人はニコニコ。
断れる雰囲気ではない。

私、頑張りました。
ちゃあんと電車に乗って、駅から家まで歩きました。
足の皮が剥けないで良かった。


そんなブーツがこちら。
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逆光で見辛い…。

ワイン色のカンガルー革、木型はS13で短靴と同じ。
13とは何か聞いてみたが、うちの記号です、と仰るのみで詳しくは分からず。

ソールやコバの仕様は短靴と同じ。
レザーソールのマッケイ。
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試着後履いたまま帰ってきたため、若干削れている。

ソールの模様やヒール部分の模様(これはブーツにはないが)について質問してみた。
これらは職人の遊び心であり、装飾以外には特に理由はなく、名前もないとの事。


爪先は磨耗しやすいので、「これ」はそのためだと思うが、
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「これ」も特に決まった名前はないらしい。
一度ロングウイングの「これ」が取れたので付け直して貰ったが、ご主人は確か、
金属つけておきますか?
と仰ったのだった。
ご主人はビンテージスチールなどという名前はご存じなかった。最近の流行でつけられた呼称なのだろうか。

前足部の縫い目はすっきり見えるように一重だが、
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踵やファスナーは二重に縫われている。
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YKKのファスナーは底まで下がる。
筒周りもぴったり作ってあるので、本当に下まで下げないと履けないし脱げない。
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内部のカウンター部分。
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もちろん金属製ではなく革である。

このブーツとの初めてのお出かけは、いきなり砂利道ありの公園というハードなデビューだったが、無事突破。
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フィットし過ぎて靴じゃないみたい。革の靴下みたい。革の靴下なんて履いたことないけれど。


ブーツができたのは勿論喜ばしい事なのだが、それ以上に嬉しかった事がある。
履いていったロングウイングを、良く手入れしてあると、褒めてくれた。
嬉しかったな…。
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Dickersonのケア終了

Dickersonのケアが一応決着ついた。
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購入当初は洗うかどうか迷っていた。
しかし、靴の内側に染み込んだ前オーナーの足型を見ていたら、これ洗わないと精神衛生上無理だわ…と思い始め、
いただいたコメントにも後押しされ、
もし色移りしても、割れるよりずっとましだと開き直る事ができた。

結果、普通に洗って普通にグリセリンでひたひたにして普通にオイル塗って普通にクリームで仕上げる事になった。

普通じゃないのはその回数。
乾燥していたし、florsheimのこれで懲りたので、

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グリセリン2回に、レーダーオイルと1909シュプリームを数えるのもうんざりする位塗り上げて、復活。
案外カビないものである。
色移りも、境目が少し滲んだ位で全然許容範囲。
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内側も革だからか触るとふにふにする。
でもまだおっかないけど。ここなんか屈曲部なのに()の端が切れてる気が…。

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紐はとても綺麗になった。
…というか綺麗になりすぎた。黄ばみが取れすぎて味がない笑。

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エマールで揉み洗い後、残った黒ずみを襟用の洗剤(ちなみに使ったのはトッププレケアエリそで用)ぬりぬりで、驚きの白さに。
本当は紐は新品をつけたいところだが、この手のタッセル付きは数が少なく、なかなか見つからず…。


古いクリームを落としてみたら、白いアッパーは黄身がかった色だった。
合うクリームが見つからず、取り敢えず白で仕上げたけれど…うーん、粉浮きしたおばあちゃん?

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綺麗にするの面倒くさい…
もういいわ、アンティーク仕上げという事で。
無色で手入れしていけば少しずつ取れてマシになっていくでしょう。多分。

混色以外ではブートブラックのその名もヴィンテージホワイトが近そう。
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(画像は公式HPから)
でもこの一足のために買うのももったいないし、匂いがきついと聞くので二の足を踏んでいる。


当時の広告を見ていると、白い靴は本来春夏物なのかな?と思う。

季節はもう秋本番。
だけど折角なので、穴から入る隙間風で足が凍えるまでは履いておきたい。

クリームがかった白も、茶色のトゥも、秋の服に馴染むので。

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仮縫いチェックは体力勝負

秋の長雨、漸く現れた青空の日にアルスノバへ。



目的はもちろんブーツの仮縫いチェック。

私が店に着くと、ご主人は徐に設定温度23度のクーラーを入れる。
暑い日だったとはいえ随分低温だなあと思ったが、理由はその後知ることになる。


早速、ブーツ用の真っ白な箱から、オーダーしたワイン色のブーツを取り出してくれた。
わーこれが…等と浸る暇もじっくりみる暇もなく、さあ履いてみてくださいとブーツのファスナーを下げ、長い靴ベラを底まで差し込み、フィッティング開始である。

ご主人、自分がブーツを押さえているから体重をかけて足を入れて欲しい。と仰る。

押さえる…?
ちょいと引っかかるが、足入れをする。
のだが。

…?
???
!!!!

はい…らない!
ちっとも入らない!
若干パニックになり、思わず、えっちょっこれ入るんですかと声が上擦るが、ご主人は涼しい声で、
入ります。初めてお履きになる時にすんなり履けてしまう靴は緩い靴です。等と仰るのである。
いえ、それは何度も聞いたけど、でも。
これは全く想定外。
AAAA〜AAAAAの私の足が、まるで、全く、入る気がしないのである。

しょうがないのでぐいぐい押し込む。
片足立ちの上、右手は靴ベラを押さえ込み、左手は作業台を掴み、靴が壊れるのではないかという勢いで足をねじ込む…のに入らない。
あまりの入らなさに笑えてくる。
ファスナー付きなので筒部分はなんともないが、どう頑張っても踏まず周辺で外反母趾の骨がひっかかり進まない。ブーツに幾重も皺が寄る。
ご主人、皺を指でぐいぐい押し、革ごしに私の足をごりごり押してくる。痛い痛い!

皆さん外反母趾で引っかかりますが、これを越えたら入っていきますから。
と言われても、越えられる気がしない。
もっと踵に体重をかけてください、と言われても、既に後ろに転ぶ一歩手前ですよご主人!
ひいひい言いながら、それでもじわじわ進んでいたらしく、ようやく足入れ完了。やったー!

ファスナーはご主人が上げてくれる。1分程かけて上がった。
以前仰っていた通り、確かに馴染めば5秒で上がるかもしれない。
でも足入れに20分はかかったよご主人!
聞いてないよご主人!
そりゃあ嘘は言ってないけど!笑
これが数秒で履けるようになるとはとても思えないよ!

終わった頃には私もご主人も汗びっしょり。
皆さんブーツの時は汗をかくそうで、23度のエアコンの意味を知る。

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ところで、靴は左右で1つである。
私も信じたくはなかったが…
この時点でまだ左足しか入れていない。
左足はむしろ前哨戦。
本番はこれからだった。


少し休憩の後、右足のフィッティング開始。

とはいえ、左程は苦労はしないと見ていた。
私の足は左に対し右の方が若干狭い。
左よりはすんなり入るだろう。そう思っていた…のに。
入らない。左より入らない。なぜ。どういうことなの。

暴れるブーツを押さえつけている反動だろうか、ご主人の手の皮がむける。
すみませんすみません大丈夫ですかとアワアワする私をよそに、ブーツはいつもこうなるんですよね…と至って普通に絆創膏を貼るご主人。よく見るとその手は傷とタコだらけである。


と、この辺りで修理の来客。
汗だくでブーツを中途半端に履き、ぐったりした顔で水をがぶ飲みする女…さぞシュールだったと思われる。


修理の客が帰り、再び入る気のまるでしないフィッティング再開。
ご主人は私が着用していた黒ストッキングを指し、少し厚めですか?と仰る。
いえ、そんな事はないと思うんですが… 。
滑りが悪く革を巻き込んでいる、本当は肌色の、滑りのいいストッキングが良い。との事。
なんですと。
全く意識していなかったが、そう言われれば確かに網目が若干荒い気がしなくもない。

だが既に左足は入っているし、ブーツ自体は左右同じに作られているらしい(私の足は左右差が少ない)。
入る筈なのだ、数値上は。

でも入らないのである。
休憩を挟みながら行っているものの、体力的にそろそろ辛い。この辺りで明日の筋肉痛を心配し始める。
たかがブーツを履くだけで筋肉痛…。自分で書いていても意味が分からない。


人は限界が近いと妄想が湧くらしい。
私のような小娘にも決して敬語を崩さないご主人の声が、スポコン漫画さながらのコーチのように脳内で勝手に変換され始める。

-もっと力を入れて!
はい、コーチ!
-靴の中で左右に揺らしてみろ!
はい、コーチ!
-靴ベラを握るな!持っていいのは上だけだ!
はい、コーチ!でももういろいろ限界ですコーチ!
(あくまで私の脳内での出来事である)

もう認めざるを得ない。
はじめから滑らかなストッキングを買ってくるべきだったのだ。
今履き替えても、もう一度左足も履かないといけないなんて体力的にも精神的にも辛い。
進むも地獄、引くも地獄。
だけど、このまま先の見えない出口に向かって頑張るより、お互いにとっても良いのではなかろうか。

これ、ストッキングを買って来た方が良いかも知れません と言ってみる。
するとコーチ…じゃない、ご主人はこう仰るのである。

-あと1回頑張ってみてからにしましょう。
そんな!私にはもう無理ですコーチ!


HALさんはぴったりの靴を望まれますし、まだお若いから、本当にぴったりに作らせて頂きました(にっこり)…ですって。
そんな意味でも場合でもないのに、微妙に喜んでしまう阿呆な自分笑。


あと1回。あと1回。
そこからはお互いもう無言。笑うと力が入らないから笑わない。
喋る余裕も、もうない。
ブーツを押さえるご主人の、汗ばむシャツの背中を見ながら頑張るだけ。


あ。
入るかもしれない。もう少し。
最後の力を振り絞る。
…入ったー!
ようやく靴べらを抜く。ふー。
ん?踵がちょっと浮いてる?
ご主人曰く、ぴったりの靴を履かれると、皆さん浮いているようだと仰います。との事。
ほほう成る程……いや、でもこれ本当に浮いてないか?左と感覚が…違う。

疲れきった体に鞭打ち、何度もジャンプ&ジャンプ!漸く本当に足入れ完了。
ブーツに足を入れる事が、こんなに体力勝負だなんて思わなかった。
汗をかきすぎて、桜色のタオルハンカチはファンデーションのベージュ色になった。


あれだけ苦労したのに、いざ両足入ってみると不思議なもので、これ位細くないといずれ前滑りするだろうな…という感じがなんとなく分かるのである。
爪先は余裕。
ボール部も余裕がありもう少し狭めても大丈夫だろうが、これ以上足入れに苦労したくないので笑、これで決定。
踏まず〜踵は非常にきつい。ギチギチに締め上げてくる。
歩くなよ絶対歩くなよ!と足に言われている気がする。

でも私は知っている、これもそのうちにぴったりになって…いつか緩くなる事を。
そう、前回作っていただいた短靴は、わずかだが、もう踵が緩い。

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ロングウイングのため、底側が爪先から踵まで革が二重になっているおかげで、辛うじて保たれている。


右足はファスナーも上がらなかったので、これではさすがにきつすぎるという事でわずかに緩める事に。
右足の方がワイズが細い筈だが、踵やくるぶし周囲等がわずかに左と違うのかもしれない。


死ぬ程苦労した右足側。

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本当、よく壊れなかったと感心してしまう。


仮縫い時の底はこんな感じ。

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仮で止めているだけなので、革が縮む可能性があるらしく、仮縫い完成の連絡を貰ってからはなるべく早くフィッティングに行った方がいいとの事。

底付けをして完成だが、右足側を緩めるので当初の予定より若干長く、完成は10日〜2週間後予定(でも十分早いと思う)。


フィッティング時の注意点。

●手持ちで最も薄く、なめらかなストッキングを吟味してから行く。
自信がなければ店近くのセブンイレブンで買う(皆さんここで肌色のショートストッキングを買われるらしい)。

●アルスノバの後に予定を入れない。アルスノバの前と翌日も出来れば入れない。
この日はアルスノバの後に別店で修理済みの靴を引き取る予定があったが、疲労が凄すぎて正直とてもじゃないが行きたくなかった(行ったけど)。
その日の夜はもちろん爆睡。翌日は足と腕の筋肉痛で悶絶。

●ハンカチと飲物は必須。


完成が楽しみ、というより、恐ろしい靴である。

ついに出た

このブランドのこのサイズが出たら、試してみたいとは思っていた。

事前情報から、私には恐らく緩いであろう事は分かっていた。
それでも一目見た時、手を出さずにはいられなかった。
なぜなら彼女はあまりにも美しく、そして安かったからである。

ferragamoの6.5。AAAAA。

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白x紺のキャップトゥパンプス。
トップラインの五重ステッチが特徴的。
一体何を思ってこの美しい靴にステッチを5周もぐるぐるぐるぐる巻いたのだろうか?
私には分からない。が、手間がかかっている事は分かる。
ヒールは6cm。踵の形が魅惑的。

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6.5で探していたのは、この靴で6では微妙に小さい事が分かったから。捨て寸が少し足りない。

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いかに幅展開が豊富なフェラガモでも、恐らく最も狭いであろうAAAAAは貴重だ。それも7未満になるとなかなか見ない。
今やアメリカの旗艦店でもAAAまでしかないらしいので、この靴も結構前に作られたのだろう…と予想していたら、こんなものが。
ソールの値札、店名が付いてる!

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I.magninと書いてある。
どうやらI.magninはサンフランシスコにかつて存在していた高級デパートのようで、1876年創業。買収されたようだが、今もブランド名は続いている…のかしら?
飴色のソールが美しい。


それにしても、諭吉1枚で余裕でお釣りが来るとは…。こんなにいい靴が。
この状態、試着程度なんじゃないの?
安すぎる。倍値でもおかしくないと思う。それだけの価値があると思うのだが…。
ナロー過ぎるのと、欧米人にはサイズが小さいせいだろうか。


カウンターが長い。ここまで入ってる。

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古い靴は長いものが多いが、これはパンプスということもあり最早芯材がない面積の方が少ない。

五重ステッチではないところも、これまた丁寧に二重にステッチをかけてある。
革もきれい。

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足入れと調整は保湿が終わってから。
それまで我慢、我慢。

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事故

我ながら豪快にやらかしたなあと…。

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florsheimのsassy(仮)。
帰宅したらこうなっていた。
履いている途中でどこかの糸が切れたか、元々切れかかっていたか…そこからベリベリ広がっていったのだろう。そして革の急なたわみによるクラック。
これだから古い靴は怖い。

履き下ろしでいきなり通勤に使ったのもよくなかったのだろう。
アルスノバの靴でやったように、少しずつ着用時間を伸ばして様子を見るべきだった。
最近なんとなく古靴に慣れてきて、慢心もあったかもしれない。


私の靴は婦人靴で、多くの古靴好きな男性がお持ちの紳士靴とは革の厚みや糸の太さからして違う事。
60sでも50sでもなく恐らくは40sである事。
ヒールがある故にボール位置の屈曲部は特に体重がかかる事。
一箇所糸が切れていたら(タン付け根の糸が切れていたので修理している)他の箇所も危ない事。

肝に命じなければ。


迷ったが、入院させてみた。
治療完了の知らせが届いたのでお迎えに行かないと。
ま、何をしても駄目な時もあるのだろうけど…その時はその時よね。